取材協力:井上ボーリング・ナインゲート・エグケンガレージ
写真・文:佐賀山敏行
※2018年8月31日の記事を再編集しました。
軽量斧型クランクを装着したのが今年の春。高回転までぐんぐん回るエンジンはSR400とは思えないもので、まさにライトウエイトスポーツ! てな感じが僕はおおいに気に入っていた。その時の記事はこちらを参照していただきたいのだが、そこでも書いたように、唯一気になったのが振動の大きさ。Rural RacerはオールFRP外装で、余計なものをすべて取っ払った超軽量仕様。なので、余計に振動が大きく感じていたのだ。じつはこの点に関しては以前から井上社長も気になっていたようで、製品化したのちも研究を続けていたという。
そして、軽量斧型クランク発売から1年以上が経過した今回、満を持してのモデルチェンジがおこなわれたというわけ。その出来栄えには井上社長も大満足で、僕にも「是非!」ということで、Rural Racerにあらためて装着することになったのだ。
初期型との違いは重量。クランク内側をさらに削り、600gの軽量化を果たした。これによってピストンのバランスがさらに向上し、振動の軽減につながった。
作業をしてくれたのはお馴染み、ナインゲート・細井さん。じつはこの組み込み時にエピソードがあって……エンジンを組み終わり、車体に乗せて試走をしたあとにすぐに連絡をくれたのだが、その内容は「佐賀山さん、これはすごい! すぐにお店にきて乗ってみて!!」というもの。そこまで言われたのなら、行かないわけにはいかないよね……ということで、日も暮れかかった2018年7月某日に行って、まだキャブセッティングも出ていない愛車に乗ってみたのだが、これはもうびっくり仰天! 振動が減っているどころか、ほぼ無くなっているのである。正直、ここまでのレベルで改善しているとは思っていなかった。
そして後日、しっかりキャブセッティングが行われた状態で乗ってみると、さらに驚いた。本当にどこまでも回る、そして回せば回すほどパワフルに車体が進んでいくエンジンに仕上がっているのだ。ちなみに前回の懸案事項であったハイカムを、今回はせっかくだから入れてみた。その効果ももちろんあるだろうが、それにしてもよく回る。そしてやっぱり、不快な振動は皆無。低速トルクは多少細くなった感はある(といってもコレは前回と同じ)が、気になるレベルではない。これは本当に、世界で一番楽しいSR400エンジンになったかもしれない!
右が「タイプ2」で左が「タイプ1(初期型)」。内側の濠を見れば、違いは一目瞭然だ。
現状のRural Racerのエンジン仕様は……
・排気量:399cc(純正同様)
・クランク:iB軽量斧型クランク Type2
・シリンダー:アルミメッキシリンダー「ICBM®」
・ピストン:ワイセコφ87/圧縮比:12:1(500cc時)
・カムシャフト:ヨシムラジャパン ステージ1
・キャブレター:ケイヒンCRφ33
・エキゾースト:スーパートラップ(9枚)
果たしてこれで一体、どれくらいのパワーが出ているのか? 僕も細井さんも、井上社長もiB大澤さんも興味津々!! というわけで、井上ボーリング近くにあるレーシングバイク専門店「エグケンガレージ」へ。
同店にはダイノジェット製シャーシダイナモがあり、井上ボーリングが製品開発をするときにもよく協力しているとのこと。お店自体はレーサーを専門としていて、実際に数々のレースで実績を残しているのだ。店内には2ストロークエンジンのロードレーサーや最新のスーパースポーツが所狭しと置かれている。そんなお店におよそ似つかわしくないRural Racerだが(苦笑)、さて実際にシャーシダイナモに載せてみた我が愛車の実力は?
ロードレース好きの間では知る人ぞ知る名ショップ。ちなみに同店ではパワーチェックは5,000円~、別途費用でセッティングもおこなってくれるとのこと。愛車を最適な状態で乗りたい人は、一度問い合わせてみてはいかがだろうか。
なんと約8,200rpmで、後輪出力32ps超! ちなみに井上ボーリングが持ち込んだ純正400は約6,500rpmで、後輪出力23.9ps。その差は歴然だ。もちろん、これは軽量クランクだけではなく、上述のとおり、ハイカムやピストン、キャブレターなども合わせた結果である。しかし、それにしても排気量は399ccのままでここまでのパワーが出るとは思ってもみなかった。
……といいつつも、僕はSRの楽しさは絶対的なパワーではないと思っている。だから見て欲しいポイントは、最高出力ではなく、回転の伸び。下のグラフを見れば、回せば回すほど楽しいエンジンに仕上がっているのが分かるだろう。
赤と青のラインがRural Racer、オリーブが純正400。全体的にパワーが上回っているが、5,000rpmを過ぎてからの伸びの違いに注目。ハイカムなどの影響も強いと考えられるが、ここまで高回転域をストレスなく回し切るためには、軽量クランクが果たした役割も大きいはず。
今回のモデルチェンジを機に、今後購入できる軽量斧型クランクはすべてタイプ2となる。価格などは据え置きなのは嬉しい限り。振動が大きく軽減されることは高回転型エンジンにとってネガティブになることは何もないので、これを機に、今まで気になっていた人は気兼ねなく、この楽しすぎるクランクの導入を検討してほしい。
新しくなった井上ボーリングの自信作……とりあえず僕はこれからガンガン、ワインディングを楽しんじゃいます!
ナインゲート・細井さん(左)とエグケンガレージ・江口さん(右)。今回はお世話になりました!
またまた生まれ変わったmySR【Rural Racer】……といっても、見た目は何も変わっていない(苦笑)。
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